辞書を読む生活

生活:社会に順応しつつ、何かを考えたり行動したりして生きていくこと(新明解国語辞典)

高校生に必要な辞書(2)英和辞典

英和辞典は、大学受験を考える高校生に必要な辞書のナンバーワンだろう。

なんたって、国語が入試科目にない大学はあっても、英語がない大学は(たぶん)ないのだから。

しかも英語は、単語ごとに分かち書きされるから、古文と違って辞書で調べやすい。「などかいできざらんと」とかって、文節と単語の切り方を分かってないとそもそも辞書を引けないし、実は辞書を引けてる時点で分かってるじゃん、ってことになる。

 

さて、高校生用の英和辞典は、次の4つにとどめを刺す。

三省堂 ウィズダム英和辞典

https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wordpress/wp-content/themes/dictionaryandbeyond/img/ssd10592.png

▶旺文社 オーレックス英和辞典

https://www.obunsha.co.jp/img/product/detail/075140.jpg

▶大修館 ジーニアス英和辞典

https://www.taishukan.co.jp//images/book/197539.jpg

▶研究社 コンパスローズ英和辞典

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51WRy93wvQL._SX366_BO1,204,203,200_.jpg

どれを使っても、使い方さえ間違わなければ大丈夫。十分使える。重要なのは、用例をしっかり読むこと。語義を見るだけでは、辞書をひく意味がない。

これら以外の辞書を使っている高校生は、少なくとも高2になるまでには、この4つのうちどれかにした方がいい。

とはいえ、電子辞書を使っていれば、たいていジーニアスが搭載されていて、選択の余地のない人も多いかもしれないが、他の三つを搭載している「物書堂」という優れたiOS用辞書アプリもあるので、電子派の人も、選んでみる価値はある。

まあ、紙の本だとどれも大部で、毎日持って歩いたらかなりのウェイトトレーニングになること請け合いだけれど、調べて知った語が増えていくのを目の当たりにするという紙特有の達成感は、電子辞書やスマホアプリでは味わえないものだろう。達成感、大事。

 

で、本題。4者の比較。「apply」を引いてみる。

ポイントは、「apply to A」と「apply for A」(Aは名詞)の区別がどの程度明示されているか。

(用例の和訳はいずれも省略)

 

ジーニアス英和 5版

①[SV(to O1)(for O2)](O1<人・組織など>に)(O2<仕事・許可・援助など>を)求める(ask for)、申請する、申し込む、(O1に)出願する、志願する

Please apply in person [by letter].

He applied for a job [to three colleges].

She applied to join the audition.

 

ウィズダム英和 4版

①[apply (to A) (for B)]<人が>(正式に書類などで)(A<人・組織など>に)(B<職・入学・許可など>を)申し込む、志願[出願]する;依頼する、問い合わせる

apply for a summer job

apply to [for admission to] several colleges

apply for a visa to study abroad

Any employee can apply for entry [membership].

 

オーレックス英和 2版

①(文書などで正式に)依頼する、申請する、申し込む、出願[志願]する、申し出る;照会する<to 人・組織に;for 仕事・許可などを/to do …することを>

Apply to the loan office for details.

Apply at the address below.

apply to a college

apply for a visa [license]

apply to join a club

 

コンパスローズ英和 初版

①申し込む、出願[志願]する、申請する(to do)

I applied for a passport.[V+for+名]

She applied to three colleges.[V+to+名]

She applied to her boss for a raise in salary.

 

どの辞書も、なぜtoとforを使い分けるかの説明がないが、用例が最も実用的で、なおかつforとtoの違いを用例から推測しやすいのは、ウィズダム

次いで、オーレックス。オーレックスは、最初の2つの用例は後回しにすべきだった。あと、forの例がvisaなのは、高校生にとってはどうなんだろう。

3番目は、コンパスローズ。toとforの例がしっかり押さえられているが、forがpassportなのはどうなのか、というのはvisaと同様。

ジーニアスで有効なのは、2つめの例文だけ。でも、大学に職を求めるって、読んでる高校生の感覚ではなく、書いてるあなたの感覚だろ。

 

わずか1つの例だけれど、これはそれぞれの辞書の特性を象徴している。

すなわち今、最も使えるのはウィズダムとオーレックス。

英語の辞書といえば研究社という(遠い昔の)時代の復活をねらうコンパスローズは、後発の利点を生かし切れていない――というより、一世を風靡した「研究社新英和中辞典」の「過去の栄華」をいまだ捨て切れていない。残念。

ジーニアスの栄光(登場した際は革命的だった!)はすでに過去のものとなった。

 

とはいえ、どれもそんなに悪くはないんだけれどね(と、フォローしておく)。