辞書を読む生活

ありとあらゆる辞書が好き(ただし、好みはある:手抜きは嫌い)

「漢文用」の漢和辞典で「使える」ものはあるか

日本語に、漢文の要素が大量に入っているというのは、今さら言うまでもない。明治以前、「教養」「学問」「公文書」といえば漢文だったのだから当然。

だからその子孫たる現代日本人としても、「日本の古典」の一環として、漢文は知っておくべきだし、わざわざ知ろうとしなくても知らぬ間に入り込んでいる。

とはいえ、放っておくと曖昧になったり消えていったりしちゃうので、折に触れて漢文を学び直す必要はある。

で、「漢文を学ぶため」の漢和辞典の定番は、

▶新字源(角川)

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ohzD2A+GL._SX379_BO1,204,203,200_.jpg

▶漢辞海(三省堂

https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wordpress/wp-content/themes/dictionaryandbeyond/img/ssd14048.png

▶新漢語林(大修館)

https://www.taishukan.co.jp//images/book/197688.jpg

▶漢字源(学研)

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51G31enV4jL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg

といったところ。これらで「糊口」を引いてみる。

 

新字源(角川)改訂新版

口にのりする。かゆをすする。転じて、生活する。また、生活。くちすぎ。〔左伝〕

――出典のみ。

漢辞海三省堂)4版

かゆをすする。内容のとぼしい食物を口にする。なんとか暮らしを立てるたとえ。〈魏書〉

――これも、出典のみ。

新漢語林(大修館)2版

①かゆをすする。転じて、なんとか貧しい生活を立てること。

②口すぎ。くらし。生活。「困糊口(ココウにくるしむ)」

――漢文の用例はあるが、出典はない。

さて、これらの辞書に何が足りないか、おわかりだろうか。「漢字源」に答えがある。

 

漢字源(学研)5版

①口に食物を入れる。生活していくこと。また、生計。▷「春秋左氏伝」

②[日本]「糊口をしのぐ」とは、貧しく、やっとのことで、生活をしていくこと。

 

――そう、足りないのは「糊口をしのぐ」という日本での用例と、その意味。漢文から受けついで、今の日本でどう使われているか、という情報なんである。

実は、▶学研現代標準漢和や▶ベネッセ新修漢和といった中学生向け漢和辞典とか、▶岩波新漢語辞典とかには、「糊口をしのぐ」という用例とその意味が載っているんだが、漢文は用例も出典もない。いわんや国語辞典においてをや。

 そういうわけで、「漢文を学べて同時に現代日本で役に立つ」漢和辞典は、「糊口をしのぐ」に関する限り、

 ▶漢字源(学研)5版

だったのであります。ちなみに、アプリ(LogoVista)で使えるのは5版だけれど、紙の本の最新は6版。

https://gakken-ep.jp/extra/gakkou-saiyo/common/images/high_dictionary/1230486900/01.png

LogoVistaアプリの使い勝手は最悪だし、紙の本はかなり分厚い(索引別で2,281ページ)、ということは付け加えておきまする。