辞書を読む生活

ありとあらゆる辞書が好き(ただし、好みはある:手抜きは嫌い)

2022-01-01から1年間の記事一覧

国語辞典比較:「根暗」と「陰キャ」

小学5年生の少年に、朝比奈あすかさんの「君たちは今が世界(すべて)」を読ませていたら、 「『ネクラ』って、なに?」 と質問された。なるほど、たしかに最近聞かない気がする。すでに死語? 国語辞典で「根暗(ねくら)」を引いてみると、 ◎岩波国語辞典…

国語辞典比較:「自己同一性」は載っているか

「アイデンティティ」という言葉が広まったのは、いつ頃からだろう。 最初の頃、意味がつかみにくくて困った記憶がある。「自己同一性」と訳されたって、それでは何も分からなかった。 ▶岩波国語辞典初版(1963) には存在しないが、日国には1970年の用例が…

「いちおう現行」でも、すでに死んでいる国語辞典・漢和辞典

国語・漢字界隈では、2000年のJIS漢字コード改正、2010年の常用漢字表改定は、地殻変動にも等しい大変革。 これらを乗り越えられなかった(つまり、それ以降に改訂されていない)辞書はーー時代を超える大部な「大辞典」を除いてーーたとえ現行品として販売…

国語辞典・漢和辞典比較:虎穴に入らずんば…

虎穴に入らずんば( )を得ず ( )に何が入るか。ワタクシは、ずっと「虎児(こじ)」だと思っていた。 ところが、漢和辞典にはどれを見ても「虎子(こし)」と書いてある。たとえば ▶漢辞源6版(2018) 「不入虎穴不得虎子」(コケツにいらずんばコシをえ…

「漢文用」の漢和辞典で「使える」ものはあるか

日本語に、漢文の要素が大量に入っているというのは、今さら言うまでもない。明治以前、「教養」「学問」「公文書」といえば漢文だったのだから当然。 だからその子孫たる現代日本人としても、「日本の古典」の一環として、漢文は知っておくべきだし、わざわ…

中学受験生・中学生・高校生にとって、電子辞書は使う価値があるか。

「小中高生は電子辞書を使ってもいいのか」という話はよく聞く。 だが、「小中高生にとって電子辞書は使う価値があるか」という話は聞かない。 ワタクシは、使う価値のあるものなら大いに使うべきだと思っている。 だから問題は、「使う価値があるか」 問題…

国語辞典比較:「~にさわる」のか「~をさわる」のか

「~をさわる」という言い方を、最近耳にすることが多いけれど、耳ざわりで仕方がない。「~にさわる」じゃないのか? で、辞書くんたちに訊いてみた。 ▶岩波国語辞典5版(1994) さわる【触る・障る】①(体の一部、特に指や手のひらや足先などが)物に(軽…

中学受験生・中学生・高校生におすすめの辞書(と、やめた方がいい辞書):まとめ

なんだか、ろくでもない辞書が世に流布している気がするので、売れていようがいまいが、「いい辞書」を、世界の片隅から主張しておく(◎印)。 「×」は、すすめている人がいるけどダメな辞書。 それぞれ、理由の詳細は、過去記事をご覧あられませ。 【中学受…

中学生向け英和辞典

「中学生向け」と称している主な英和辞典は、 ① プログレッシブ中学英和辞典(小学館) ② ジュニアアンカー中学英和辞典(学研) ③ Challenge中学英和辞典(ベネッセ) ④ ジュニアクラウン中学英和辞典(三省堂) このうち、 ③と④は、自動詞と他動詞を区別し…

国語辞典比較:「ふみおこなう」が説明不要だと思っている編者に猛省を促す

「倫理」「人倫」「人道」「道徳」「道義」「道」を引いてみたら、 その語釈に「ふみおこなう」という、聞き慣れない言葉が多発。 まずは、 ▶岩波国語辞典8版 りんり【倫理】①人間生活の秩序つまり人倫の中で踏み行うべき規範の筋道(の立て方) どうぎ【道…

小5から高校まで使える国語辞典

『すべての高校生は、ベネッセ表現読解国語辞典を「読め」』とは言ったものの、 抽象概念に考察を加える前に、もっと基本的な国語力・日本語の語彙力を培う必要は当然あって、 それはすなわち、中学から高校にかけて、あるいは中学受験をするなら、小学校高…

高校生に必要な辞書(4)国語辞典

漢和、英和、古語とくれば、次は国語。 ここで問題なのは、高校生の大半は客観的には国語辞典を使って日本語の読解力と表現力を向上させる必要が認められるのにかかわらず、彼らは「国語苦手~」といいながらも国語辞典を使う必要性を認めていない(知らない…

高校生に必要な辞書(3)古語辞典ーー全訳バトル

1986年まで、高校生向けの古語辞典といえば ▶旺文社古語辞典 初版1960(10版増補版2015) が定番だった。ところが1987年1月に、革命が起きる。 ▶小学館 全訳古語例解辞典 が、用例すべてに現代語訳をつけて登場。「英和辞典では、用例文に日本語訳をつける…

高校生に必要な辞書(2)英和辞典

英和辞典は、大学受験を考える高校生に必要な辞書のナンバーワンだろう。 なんたって、国語が入試科目にない大学はあっても、英語がない大学は(たぶん)ないのだから。 しかも英語は、単語ごとに分かち書きされるから、古文と違って辞書で調べやすい。「な…

高校生に必要な辞書(1)漢和辞典

日本語の文章を書こうとする場合、国語辞典は必須。 たとえば「Aに必要なB」という用法があるのかどうか、確認するために国語辞典を引く。 その要望に応えてくれるかどうかは、その国語辞典の用例の揃え方による。「Aに必要なB」という用例は、たとえば…

国語辞典比較:「を」鑑みる?

近ごろ気になる助詞の使い方。 その一つが、「…を鑑(かんが)みる」 「…に鑑みる」じゃないの? ずっと「に」だと思ってきたんだけど。 まずは「新明国」に訊いてみよう。 ▶新明解国語辞典 8版 過去の実例や現在の一般的事情をよく考え合わせて、自分の判…

国語辞典比較:ラ抜き(ほんとはar抜き)はまだとことん非公認

非常に大雑把に言えば、 近世、五段活用の動詞から「可能動詞」が生まれた。 たとえば「読む+れる=読まれる⇒読める」 つまり「yomareru⇒yomeru」:消えた音は、「ar」 最近の「ラ抜き」と言われるものも同様で、 たとえば「来れる」は「korareru⇒koreru」 …

国語辞典比較:雪や氷は、溶けるのか、解けるのか。

▶新潮現代国語辞典 初版 とける【溶ける・(融ける)】①固まっていたものが液状になる。「氷が―ける〔ヘボン〕」「淡雪の日の目に逢ッて―(解)けるが如く〔浮雲〕」… 「解ける」の語釈と用例に、氷雪の類はない。「溶ける」一択か。次、岩国。 ▶岩波国語辞…

国語辞典比較:「お疲れさま」は目上に使えるのか

目上の人には「ご苦労さま」ではなく「お疲れさま」と言うべし、という俗説がはびこっているが、それは果たして正しいのか。 たしかにそう書かれている辞書もある。 ▶大辞林 4版 おつかれさま【御疲れ様】仕事などの疲れをねぎらうときに使う語。仕事を終え…

国語辞典比較:「ご苦労さま」を目上に使うと無礼なのか

目上の人には「ご苦労さま」ではなく「お疲れさま」と言うべしと、巷間、よく言われる。 たしかに、 ▶岩波国語辞典 8版 ごくろう ②他人のほねおりをねぎらう言葉。「―だったな」 ▷②はふつう目上の人に対しては使わない。 ていう辞書もある。ただここでは、…

国語辞典比較:断つのか、絶つのか。

「断つ」なのか「絶つ」なのか、 使い分けに自信がないから、いつも辞書を引くんだが… ▶岩波国語辞典 8版 ①続いてきた物事を絶やす。[絶・断](ア)つながりをなくする。縁を切る。「望みを―」「酒を―」… ②物を幾つかに切り放す。[断・截]… ★そもそも漢…