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新明解国語辞典 動物園の変遷

かの有名な新明解国語辞典

かの有名な(最もぶっ飛んでる)第4版の初期バージョン、

2刷り(1991/2/10:小型版)が運よく手に入り、

これで新明国ラインナップが、

2版11刷(1978/2/1)←初版とほぼ同じという話

3版29刷(1988/2/1)

4版2刷(1991/2/10)←new

4版19刷(1995/1/10)

5版1刷(1997/12/10)

6版9刷(2008/10/20)―ここまで小型版、

7版(2011)と8版(2020)は電子版

となったのであります。

その記念に、かの有名な「動物園」を、それぞれで引いてみました。

 

▼2版11刷・3版29刷:

 鳥獣・魚類などを(自然に近い状態で)飼い、観覧者に見せる公園風の施設。

――魚類は水族館では?という気もするけど、無難な語釈。ちなみに、

▽岩波国語辞典・初版14刷(1967/11/20)

 各地から各種の動物を集め、できるだけ自然の状態で飼っておく施設。観覧者を入れる公園風のものが多い。

――ん? なんか似てる? 岩国の方が先だよね。という辺りに不満があったのかどうか、4版では語釈がガラリと変わって、

 

▼4版2刷:

 生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえてきた多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。

――魚に虫まで加わった(「動物」という言葉を語釈に使いたくなかったのかな)上に、「と称し」とか、「捕らえてきた」とか、「狭い空間での生活を余儀無くし」とか、「飼い殺し」とか、「人間中心」とか、怒ってますな・・・・・・

ただし、「飼い殺し」の定義は、

 今まで飼っていた動物を、老いぼれて役に立たなくなった後も見捨てずに飼っておくこと。(3版~8版)

というものなので、「殺し」という言葉のイメージほどではないのかも。

 

▼4版19刷・5版1刷・6版9刷:

 捕らえてきた動物を、人工的な環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として都人士に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設。

▼7版・8版:

 捕らえてきた動物を、人工的な環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として一般に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設。

――「都人士」が「一般」に変わった以外は、1995年1月の4版19刷から(ほんとは4版5刷かららしい)同じ。だいぶ角がまるくなりました。「鳥獣・魚虫」もあきらめたようです。ただ、「捕らえてきた」は変わってないし、「野生から遊離」とか「動く標本」とかにも、変わらぬ主張の片鱗を感じます。

なお、岩国8版(電子版)の方は、初版から全く変わっておりませなんだ。