辞書は読み物

引いて役立つアプリもいいけど、読むにはやっぱり紙の辞書。

高校生に必要な辞書(1)漢和辞典

日本語の文章を書こうとする場合、国語辞典は必須。

たとえば「Aに必要なB」という用法があるのかどうか、確認するために国語辞典を引く。

その要望に応えてくれるかどうかは、その国語辞典の用例の揃え方による。「Aに必要なB」という用例は、たとえば「岩国」8版にはなく、「新明国」8版にも、「三国」8版にも、旺文社国語辞典11版にも、角川必携国語辞典5版にも、三省堂現代新国語辞典6版にも(以下たくさん略)、存在しない。

 

「明鏡」3版には「受験に必要な書類をそろえる」という用例がある。これを見て、こう書いても大丈夫なんだなと心強さを覚える。

ことほどさように、用例は大事。

大袈裟と思われるかもしれないが、なにせ今、助詞とその周辺(とくに「を/に」とか「な/の」とか)には大規模な地殻変動が進行中。うかうかしてはいられないんである。

 

ともあれ、高校生に必要な辞書は、どんなものか。

 

こういうとき最近は、「高校生が買うべき辞書とは、…」という人が多くて、「とは」の使い方とは、と思ったりするんだけれど、これまた脱線。これについては、またそのうちに。

 

さて本題。高校生に必要なのは、英語の勉強に英和辞典、古文の勉強に古語辞典、漢文の勉強に漢和辞典、というところか。(私立理系には古文漢文は関係ないかもしれないが)

 

まずは漢和辞典から。

はっきり言って、漢文(という名の授業と入試科目)を学ぶためには役に立たないと言っていい。

漢文(という名の授業と入試科目)は範囲が限られているから、注釈書と参考書があれば、辞典など要らない。

むしろ漢和辞典が必要なのは、漢字を日本語として日常的に使う際。

ところがそれを意識した漢和辞典が、あまりにも少ない。ほとんどは(高校生には不必要な)「漢文(中国の古典)学習向け」

「漢字辞典」という名の書籍があるけれど、お手軽に仮名を漢字に変換するだけで、深みに欠ける(漢検向けとか)。

 

というわけで、高校生が「漢文(という科目)を勉強する」ためなら、辞書は不要。

でも「漢字を日常的に使いこなす」ためなら、「中学生向け」と自称する漢和辞典が役に立つ。

 

たいした選択肢はない中で、使えるのは

学研現代標準漢和辞典 改訂第4版

デザインは、赤が多用されすぎで目がチカチカするけれど、日本語として漢字・漢語を使いこなすには、かなり役立つ。

たとえば「必要」の項目には、「入学必要願書を提出する」という用例がちゃんとある。

この辞書は、高校生に限らず、日本語で文章を書こうとする全ての人の助けになること請け合い。

1年半たってもまだ第1刷が売られているところをみると、あんまり売れていないんだろうなあ、と思われるところが残念。

国語辞典比較:「を」鑑みる?

近ごろ気になる助詞の使い方。

その一つが、「…鑑(かんが)みる」

「…鑑みる」じゃないの? ずっと「に」だと思ってきたんだけど。

まずは「新明国」に訊いてみよう。

 

新明解国語辞典 8版

過去の実例や現在の一般的事情をよく考え合わせて、自分の判断を決める。「時局に鑑みて」

用例は「…に」だけれど、1個だけ。語釈も用例も、初版から変わっていない。

では、新潮現代はどうか。

 

新潮現代国語辞典 初版

ある事柄に照して考える。(古風な言い方)「古へに―みる〔ヘボン〕」

これも用例は「…に」だけれど、やはり1個だけ。

ほかも同じように「…に」の用例を1個あげているだけの辞書が多い中で、「三国」

 

三省堂国語辞典 8版

〔文〕〔判断するときに〕そのことをふまえる。「内外の情勢<に/を>鑑みて決定する」〔「を―」は新しい言い方〕

おっとぉ! 我が意を得たり。やっぱり「を」は新しいのか。

と思いきや。意外な伏兵現る。

 

旺文社国語辞典 11版

手本や先例に照らして考える。「先例を―」

なんと、用例は「を」一択。そして、

 

岩波国語辞典 5版

手本に照らして考える。また、他とくらべあわせて考える。「先例に―みて」「時局を―に」

ここにも「を」の用例が! 「岩国」の5版は1994年。「新しい言い方」とは到底言えない。とはいえ、旺文社が「を」とした「先例」が「に」

次なるは、20年かけて用例を(主として文庫本から)徹底的に収集した最終兵器、渾身の労作にして傑作「てにをは辞典」

 

てにをは辞典(小山一編、三省堂

「状況を鑑みる」「過去の例に鑑みる」「経験に鑑みる」「現状に鑑みる」「時局に鑑みる」「時勢に鑑みる」「先例に鑑みる」

少なくともこの20年、「に」が圧倒的に優勢だったことが分かる。ところが、ほとんど「に」なのに「状況」だけは「を」。他方、岩国で「を」だった「時局」も、旺国で「を」だった「先例」も、「に」。

謎は深まる。と思ったら、

 

旺文社古語辞典 10版

かんがみる【鑑みる】〔「かがみる」の転〕手本や先例などに照らし合わせて考える。「臣が忠義を―て、潮を万里の外に退け」(太平記

旺文社全訳古語辞典 5版

かがみる【鑑みる】手本や先例に照らし合わせて考える。かんがみる。「たとひ四部の書を鑑みて、百療に長ずといふとも」(平家物語

大辞林 4版

かがみる【鑑みる】かんがみるに同じ。「来し方行く末を―みて/謡曲・清経」

 

なんと! どれも唯一の例が「を」ではないか!

しかも太平記といえば成立は室町時代。清経は世阿彌作だからやっぱり室町時代平家物語鎌倉時代。そして…

 

▶精選版 日本国語大辞典

かがみる ②…*今鏡(1170)「いにしへをかがみ、いまをかがみるなどいふ事にてあるに」

 

なんと平安時代で、やっぱり「を」。

むしろ昔は「を」だったってこと?

 

ちなみに、『「鑑みる」の意味が2つあってそれにより「に」か「を」かが変わる』とか言ってるひとがいるようだが、それは明らかにナンセンス。

岩国は同じ意味のもとに「に」と「を」2つの用例をあげているし、他の辞書も含め「状況」にも「先例」にも、「に」も「を」もつく例があげられているのだから。

 

国語辞典比較:ラ抜き(ほんとはar抜き)はまだとことん非公認

非常に大雑把に言えば、

近世、五段活用の動詞から「可能動詞」が生まれた。

たとえば「読む+れる=読まれる⇒読める」

つまり「yomareru⇒yomeru」:消えた音は、「ar

 

最近の「ラ抜き」と言われるものも同様で、

たとえば「来れる」は「korareru⇒koreru」

消えた音はやっぱり「ar

 

という話はワタクシの発見ではなくて、何かの本で読んだんだが、書名は失念。

だがいずれにせよ、可能の「ラ抜き」(ほんとはar抜き)は、歴史の必然だと思うんだけれど、

動詞(の活用の種類)によってその変化の速度は異なって当然で、

カ行変格活用たる「来る」は、上一段や下一段より「可能動詞化」が進行しているんではなかろうか。

①(カ変)「来れる」

②(上一)「見れる」「着れる」

③(下一)「出れる」「食べれる」

ワタクシは、②と③は(無理しているわけではなく)使わないが、①「来れる」は、すでに使っている。

 

こころみに、手もとの辞書をかたっぱしから引いてみると、

大辞泉 2版

には、「来れる」「見れる」「着れる」「出れる」が立項されていた。

大辞林 4版

には、「来れる」と「見れる」は立項されていたが、他はなかった。

 

他の辞書には(新しいものをどんどん取り入れるはずの「三国」も)、ひとかけらも載っていない。

「誤り」という記述さえない――そもそも立項されていないのだから。

最新第8版三国に採用された「エモい」よりも、よっぽど定着していると思われるんだが、なぜ無視し続けるんだろうか。

 

もっとも、助動詞「れる」が五段・サ変以外の動詞にも接続するようになった、という解釈もあり得るし、それならわざわざ「新たな可能動詞」として立項するまでもない、ということにはなるけれど。

 

実際、明鏡3版は、「れる」の「注意」で、こう書いている。

明鏡国語辞典 3版

上一段動詞・下一段動詞・カ変動詞の場合は、未然形に「られる」がついた…形が標準的だが、…「れる」を付けて使うこともある(ら抜き言葉)。日常会話では多く使用されるが、書き言葉では抑制される傾向がある。

載っているだけマシとはいえ、「日常会話では多く使用される」という認識があるなら、もうちょっと違う扱いがあるんではなかろうか。

 

国語辞典比較:雪や氷は、溶けるのか、解けるのか。

新潮現代国語辞典 初版

とける【溶ける・(融ける)】①固まっていたものが液状になる。「氷が―ける〔ヘボン〕」「淡雪の日の目に逢ッて―(解)けるが如く〔浮雲〕」…

 

「解ける」の語釈と用例に、氷雪の類はない。「溶ける」一択か。次、岩国。

 

岩波国語辞典 8版

とける【解ける・溶ける・融ける】②固まっていたものなどが、熱によって、または液体にひたされて、液状になる。[溶・融・解]「氷が―」「炉の中で鉄が―」

 

例によって漢字はどれでもいいんかい、という岩国。旺文社はというと、

 

旺文社国語辞典 11版

[使い分け]解ける・溶ける

「解ける」は、もつれているものや固まっているもの、しこりとなっているものがほぐれて離れる意で、「結び目が解ける」「怒りが解ける」「禁止令が解ける」「任務が解ける」「なぞが解ける」などと使われる。

「溶ける」は、「塩が水に溶ける」「鉄が火に溶ける」などと、液体の中に物質がまざり合って均一になる、固体が熱などによって液状になるなどの意に使われる。また「クラスに溶け込む」などと、全体の中に融和する意でも使われる。

 

雪も氷も出てこない。それに対し、三省堂の高校生向けエース「現新国」は、

 

三省堂現代新国語辞典 6版

とける【溶ける】①液体の中に他の物質がまざる。「塩が水に―」②かたまっているものが液体になる。「バターが―」…

とける【解ける】①結んだところがはなれる。…(以下略)

とける【解ける】《融ける》雪や氷が水になる。[「溶ける」とも書く]

 

なるほど。どっちでもいいのか。そしてダークホース、学研現代標準漢和。

 

学研現代標準漢和辞典 4版

【解かす・解く・解ける】固まっていたものが緩む。答えを出す。元の状態に戻る。(例)結び目を解く。ひもが解ける。雪解け。相手の警戒心を解かす。問題が解ける。緊張が解ける。誤解が解ける。包囲を解く。会長の任を解く。

【溶かす・溶く・溶ける】液状にする。固形物などを液体に入れて混ぜる。一体となる。(例)鉄を溶かす。雪や氷が溶(解)ける。チョコレートが溶ける。砂糖が水に溶ける。絵の具を溶かす。小麦粉を水で溶く。地域社会に溶け込む。

[参考]「雪や氷がとける」の「とける」については、「雪や氷が液体状になる」意で「溶」を当てるが、「固まっていた雪や氷が緩む」と考えて「解」を当てることもできる。「雪解け」はこのような捉え方で「解」を用いるものである。

 

めっちゃ分かりやすいんでないかい。納得。

 

ちなみに、「つかいわけ」が売りの角川必携国語辞典に、「とく、とける、とかす」という「つかいわけ」の項目はない。そして「とける」の用例には、雪も氷も出てこない。

 

国語辞典比較:「お疲れさま」は目上に使えるのか

目上の人には「ご苦労さま」ではなく「お疲れさま」と言うべし、という俗説がはびこっているが、それは果たして正しいのか。

たしかにそう書かれている辞書もある。

 

大辞林 4版

おつかれさま【御疲れ様】仕事などの疲れをねぎらうときに使う語。仕事を終えて帰る人に対する挨拶の言葉としても用いる。「―でした」〔「お疲れさまです(でした)」は同輩や目上の人にも使えるが、「ご苦労様です(でした)」は上位の者から下位の者に対して用いられる〕

 

一方で「新明国」は、初版から4版までは「おつかれさま」という項目はなかったんだが、5版になって次のような項目を立てている。

 

新明解国語辞典 5版

【お疲れ様】仕事に打ち込んでいる人や仕事を終えて帰る人にかけるねぎらいの言葉。〔一般に目上の人には用いない〕

 

おっとぉ! 真逆ではないか! そしてその後、

 

新明解国語辞典 7・8版

「お疲れ様」の形で、同輩以下に対するねぎらいの言葉として用いられる。例、「遅くまでお疲れ様でした」

 

「同輩以下」と明記!

同じ三省堂なのに、大辞林とのこの差は何だ?!

では、急先鋒の「三国」はどうかというと、

 

三省堂国語辞典 8版

[!](1) 戦前に芸能界で使われだし、戦後に一般化した。「お疲れ様〈です/でした〉」の形は、二十世紀末から、目上にも使うふつうのあいさつとされるようになった。

 

と喝破している。つまり「三国」の立場は、「ご苦労様です」も目上にOKだし、「お疲れ様です」もOKだ、と言っているんである。

それと比べて「新明国」だと、どっちもNGになっちゃいそうな気がするんだけど。それじゃぁ何て言えばいいんだ?

推測するに、5版に「お疲れさま」を(目上に使うものではないとして)入れたのは山田先生で、その後、後継者が「ご苦労さま目上NG」をぶっこんじゃったのではなかろうか。

 

ちなみに、「岩国」にも新潮現代国語辞典にも、角川必携国語辞典にも旺文社国語辞典にも、「おつかれさま」という項目はない。

あ、明鏡にはあるけど、語釈と用例が長いし、目上にOKか否かに触れていないので(ニュアンスからして、OKと言ってるっぽいけど)、省略。

 

国語辞典比較:「ご苦労さま」を目上に使うと無礼なのか

目上の人には「ご苦労さま」ではなく「お疲れさま」と言うべしと、巷間、よく言われる。

たしかに、

 

岩波国語辞典 8版

ごくろう ②他人のほねおりをねぎらう言葉。「―だったな」

▷②はふつう目上の人に対しては使わない。

 

ていう辞書もある。ただここでは、「さま」がついていないことに注意。

「さま」がついてもダメ、というのには、こんなのがある。

 

明鏡国語辞典 3版

[使い方]目上の人に対しては「お疲れ様」を使う方が自然。「部長、大変なお仕事でしたね。△ご苦労さまでした⇒○お疲れさまでした」

 

根拠不明。ほかにも

 

新明解国語辞典 7・8版

[運用](1)「ご苦労さま」の形で、目下の者の労をねぎらう言葉として用いられる。

 

おっと、あの新明解が? と思いきや、山田忠雄先生ご存命中は

 

新明解国語辞典 初版~5版

他人の骨折りを感謝する意を表す語。

 

とだけ。目上も目下もない。

「現代」と銘打ちながら、実際には「近代」日本文学から用例を集めた新潮現代国語辞典は、

 

新潮現代国語辞典 初版

ゴクロウ【御苦労】他人の、苦心や努力をいたわり、感謝し、敬意を表す語。「大きに―〔ヘボン*1〕」「―でした〔仮面*2〕」

―さま【―様】…人の骨折りに対し、ねぎらいの気持ちを表す語。「―。と禮を云ったぢゃないか〔坊っちゃん〕」

(注)*1:和英語林集成、*2:「仮面」(森鴎外

 

つまり、明治~大正期、「目下」という認識があったという証拠はないと思われる。もっとも、漱石や鴎外は誰でも彼でも目下扱いしていた、と言われても反論はできない気もするがw

 

ともあれ、本当に「目下意識」のある言葉だったのか、大いに疑問と言わざるを得ない。

こうした状況の中、最近、反論の狼煙が上がっている。

 

三省堂国語辞典 8版

ごくろうさま[(御)苦労(様)] <注( )は「仮名書きでもOK」という印>

[!](1) 二十一世紀にはいって、同等・目下の人に使うという意見が強くなったが、本来、「ご苦労さま」で(ございま)す」の形で目上にも使える。

(2) 江戸時代、「ご苦労(さま)」は目上にも使った。「本来、主君が臣下に使った」という説は誤り。

 

おお、思いっきり言い切ってる! 喝采

 

ワタクシとしては、三国の意見に大賛成なのだが、

周りの人々がこれを知らないとすれば(たぶん知らない)、

単なる無知あるいは無礼者と見られる可能性は捨てきれない(大いにある)のが、困ったところ。

こうして、不本意ながらも、長いものに巻かれていくんだろうか。

 

 

 

国語辞典比較:断つのか、絶つのか。

「断つ」なのか「絶つ」なのか、

使い分けに自信がないから、いつも辞書を引くんだが…

 

岩波国語辞典 8版

①続いてきた物事を絶やす。[絶・断](ア)つながりをなくする。縁を切る。「望みを―」「酒を―」…

②物を幾つかに切り放す。[断・截]…

★そもそも漢字の区別をしていないので、これでは区別がつかない★

 

新明解国語辞典 8版

一【断つ】刃物を使って、…

★これは関係ない★

二【絶つ】続いて(つながって)いるものを、そこでぶつりと切る。「行くえを―〔=行くえが分からなくなる〕」「交わりを―〔=絶交する〕」「酒を―〔=やめる〕」「退路を―〔=さえぎる〕」「悪を―〔=すっかり滅ぼす〕」「命を―〔=(a)自殺する(b)殺す〕」

★分かりやすいが、これだとほとんど「絶」になってしまいそう★

 

明鏡国語辞典 3版

①つながっている物を切り離す。断ちきる。切断する。

「一刀のもとに縄を断つ」「快刀乱麻を断つ…」「頼みの綱が断たれる」

「断」が一般的だが、「韋編三度絶つ」「琴の緒を絶つ」などの慣用もある。

★とか言われても、意味分からん★

②[断]つながりや連絡のあるものをさえぎって通わなくする。断ちきる。

「電線を切断して電源を断つ」「退路[通信網]を断つ」「遮音壁で騒音を断つ」

「ふたをして臭いを断つ」

★例が多いのは役に立つけれど…★

③[断・絶]これまで続いてきた物事を終わらせる。断ちきる。

★以下、例が8つあるけど、《断ちきる》が②と一緒だし、断でも絶でもいいとか言うし、多言を弄するばかりで要領を得ず、区別するには役に立たん★

[書き分け]「交際[筆]を断つ/絶つは、一時的か永続的かで「思うところがあって一時交際[筆]を断つ]「生涯を通じて交際[筆]を絶つ」などと使い分ける。…

★一時的だと「断つ」、永続的だと「絶つ」って、なぜ? 根拠が示されていない★

 

三省堂国語辞典 8版

たつ[断つ]①ものを切りはなす。「快刀乱麻を―」②断ち物をする。やめる。「酒を―」③さえぎる「退路を―」

たつ「絶つ]①なくす。「音信を―・消息を―・望みを―」②つながりをなくす。〔交際を〕やめる。「縁を―・まじわりを―」③終わらせる「命を―」

★「明鏡」より要領よくまとまっているけれど、いまひとつ不明瞭★

 

旺文社国語辞典 11版

[使い分け]断つ・絶つ

「断つ」は、形あるものの場合に多く用いて、続いているものを途中で切る意を表し、「退路を断つ」「食を断つ」「思いを断つ」などと使われる。

「絶つ」は、形のないものの場合に多く用いて、続いているものをそれ以上は続けない意を表し、「交際を絶つ」「命を絶つ」「消息を絶つ」などと使われる。

★明確に分けてはいるが、ポイントが「形」だとはちょっと思えない★

 

角川必携国語辞典 5版

一【断つ】①続いているものを切りはなす・「くさりを―」「⇒快刀乱麻を―」「雑念を―」「後続を―」②それまで続いていたことを一時的にやめる。「酒を―(←断酒)」「茶を―」「食を―(←断食)」③さえぎる「退路を―」

二【絶つ】①つながりや関係を切る。「縁を―(←絶縁)」②とぎれさせる。「交際を―(←絶交)」②とぎれさせる。「消息を―」「望みを―(←絶望)」③おわらせる。「命を―(←絶命)」「あとを絶たない」

★これは分かりやすい★

 

そして、ダークホース。

学研現代標準漢和辞典 改訂4版

【断つ】つながっていたものを切り離す。やめる。[例]退路を断つ。国交を断(絶)つ。関係を断(絶)つ。快刀乱麻を断つ。酒を断つ。

【絶つ】続くはずのものを途中で切る。途絶える。[例]縁を絶つ。命を絶つ。消息を絶つ。最後の望みが絶たれる。交通事故が後を絶たない。

[参考]「国交をたつ」や「関係をたつ」については、「つながっていたものを切り離す」意で「断」を当てるが、「続くはずのものを途中で切る」という視点から捉えて、「絶」を当てることもできる。

★なるほど! これは説得力ある★

 

「学研現代標準漢和辞典」、なかなかやる。

最近の学研の辞書は、ネーミングがパクリっぽくてイケてないのが多い印象だけど、

この漢和辞典は「日本語を読み書きするための辞典」として優れていると思う。